解説 離婚・財産分与
財産分与と生命保険・個人年金。
通帳には載らない財産を、見落とさない。
預金は通帳を見れば残高が分かります。しかし保険は、毎月の保険料が引き落とされているだけで、今いくらの価値があるのかは、何もしなければ分かりません。
そのため、財産分与の話し合いで保険が見落とされたり、「ただの保険だから」と後回しにされたりすることがあります。長く掛けてきた終身保険や個人年金は、数百万円以上の価値になっていることも珍しくありません。
対象になるのは、貯蓄性のある保険
財産分与の対象になるのは、解約したときにお金が戻ってくる保険です。主に次のようなものがあたります。
- 終身保険
- 養老保険
- 学資保険
- 個人年金保険
一方、解約してもお金が戻らない掛け捨ての保険(定期保険や医療保険の多く)は、原則として対象になりません。同じ「生命保険」でも、契約の中身によって扱いが分かれます。
金額は「解約返戻金」で考える
保険の価値は、これまでに払った保険料の合計でも、死亡したときに支払われる保険金の額でもありません。別居した時点で解約したとしたら戻ってくる金額(解約返戻金)を基準に考えるのが一般的です。
解約返戻金は、保険会社に問い合わせれば、実際に解約しなくても試算額を出してもらえます。毎年届く「契約内容のお知らせ」に載っていることもあります。
結婚前から入っていた保険
結婚前から入っていた保険は、結婚前に払った保険料に対応する部分は、夫婦で形成した財産とはいえません。そのため、解約返戻金を、保険料を払った期間の割合で分けて考えることがあります。
| 項目 | 金額・年数 |
|---|---|
| 別居時の解約返戻金 | 400万円 |
| 保険料を払った期間(別居まで) | 20年 |
| うち婚姻期間 | 15年 |
| 対象になる部分 | 400万円 × 15年 ÷ 20年 = 300万円 |
| 分与の割合を半分とした場合 | 150万円 |
保険料が毎年同じ額だったと仮定した例です。一括払いや契約の転換がある場合は、実際の払込の状況に合わせて考えます。
子どもの学資保険
学資保険は「子どものためのお金」という意識が強く、財産分与の対象にならないと考えられていることがあります。しかし、多くの場合、契約者は子どもではなく親です。婚姻中の収入から保険料を払っていれば、夫婦の財産として財産分与の対象になり得ます。
学資保険をどう扱うかは、子どもの進学の時期や、養育費・学費の取り決めとも関係します。保険だけを切り離さずに、離婚条件全体の中で考えることが大切です。
親が保険料を払っていた保険
契約者は本人でも、保険料を親が払っていた保険もあります。その場合、夫婦で形成した財産ではなく、特有財産として扱われることがあります。反対に、「親が払っていた」という主張があっても、実際には夫婦の口座から引き落とされていることもあります。保険料がどの口座から払われていたかを確かめることが出発点です。
個人年金
個人年金保険も、年金の受取りが始まる前であれば、生命保険と同じように解約返戻金を基準に考えることが一般的です。結婚前からの契約であれば、結婚前の払込分を区別して考えることも同じです。
すでに年金の受取りが始まっている場合は、残りの年金の価値をどう考えるかが問題になります。契約の内容を確かめたうえで検討します。
なお、勤務先の企業年金や確定拠出年金については、退職金の解説ページで触れています。
解約するか、続けるか
保険を財産分与で分けるとき、必ず解約しなければならないわけではありません。解約して戻ったお金を分ける方法のほかに、契約は続けたまま、解約返戻金にあたる額を預金など他の財産で調整する方法もあります。
保険は、一度解約すると、年齢や健康状態によっては同じ条件で入り直せないことがあります。また、加入から間もない保険では、解約返戻金が払った保険料を大きく下回ることもあります。それぞれの契約の中身を見て判断します。
相手の保険が分からないときの手がかり
配偶者がどんな保険に入っているか、正確には知らないということもよくあります。次のようなところに、保険の手がかりが残っていることがあります。
- 源泉徴収票や確定申告書の「生命保険料控除」の欄
- 通帳やクレジットカードの明細にある、保険会社への引き落とし
- 保険会社から届く郵便物や、年末調整のための控除証明書
一つひとつは断片的でも、突き合わせると契約の全体像が見えてくることがあります。
確認する資料
- 保険証券、毎年届く「契約内容のお知らせ」
- 保険会社が作成する解約返戻金の試算書
- 保険料の引き落としが分かる通帳や明細
- 生命保険料控除証明書、源泉徴収票、確定申告書
解決事例:退職金、自宅、保険をまとめて整理した事件
離婚 CASE FILE 01
自宅、預貯金、まだ受け取っていない退職金に加えて、個人年金や生命保険も問題になった離婚事件です。それぞれの資料を確認して個別に評価したうえで、財産分与全体を整理し、離婚後の子どもの学費などの条件も含めて解決しました。
過去の個別事例であり、同様の結果を保証するものではありません。
ご相談について
保険は、契約の中身を一つずつ見ないと、財産としての価値が分かりません。手元の保険証券や「契約内容のお知らせ」をお持ちいただければ、どの保険が対象になりそうかから一緒に整理します。
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