解説 離婚・財産分与
財産分与と退職金。
まだ受け取っていない退職金は、どう扱われるか。
配偶者がまだ退職していなくても、将来受け取る退職金が財産分与の対象になることがあります。勤続が長いと、退職金が自宅や預貯金と並ぶ大きな財産になることも珍しくありません。
このページでは、退職金が対象になる条件、対象になる金額の計算、確認する資料を、実際の事件での経験を踏まえて説明します。
退職金は、財産分与の対象になるのか
退職金には、給与の後払いとしての性質があります。そのため、婚姻中の勤務に対応する部分は、夫婦が協力して形成した財産として財産分与の対象になると考えられます。
- すでに支給された退職金
- 預金などの形で残っていれば、婚姻期間に対応する部分が対象になります。生活費などに使ってしまった場合は、対象にならないことがあります。
- まだ支給されていない退職金
- 将来支給される見込みが高い場合に、対象になります。問題になることが多いのは、こちらです。
どちらの場合も、結婚前の勤続期間に対応する部分は、原則として対象になりません。
まだ受け取っていない退職金が対象になる条件
退職金は、実際に退職するまで支給が確定しません。そのため、将来受け取る可能性がどの程度確実かが問題になります。判断のときには、主に次のような事情が考慮されます。
- 勤務先に退職金規程があるか
- 勤務先の規模や経営の安定性(公務員かどうかも含む)
- 定年までの年数
- そのまま勤務を続ける見込み
「定年までの年数が短ければ対象になりやすい」という傾向はありますが、何年以内なら対象という一律の基準はありません。公務員や大企業の場合は、定年まで間があっても対象とされることがあります。反対に、転職の可能性が高い場合などは、対象から外れることもあります。
対象になる金額の計算
実務でよく使われるのは、別居した時点で自己都合退職したと仮定した退職金額を基準にする方法です。その金額のうち、勤続期間全体に占める婚姻期間(別居まで)の割合に当たる部分が、分与の対象になります。
| 項目 | 金額・年数 |
|---|---|
| 別居時に自己都合退職した場合の退職金 | 1,200万円 |
| 勤続期間 | 25年 |
| うち婚姻期間(結婚から別居まで) | 20年 |
| 対象になる部分 | 1,200万円 × 20年 ÷ 25年 = 960万円 |
| 分与の割合を半分とした場合 | 480万円 |
実際には、自宅や預貯金、住宅ローンなど他の財産と合わせて、財産分与全体の中で計算します。
確認する資料と、相手方が開示しないとき
退職金の金額を確かめるには、主に次のような資料を確認します。
- 勤務先の退職金規程(就業規則)
- 勤務先が作成する退職金の見込額の証明や試算
- 入社日が分かる資料、給与明細、源泉徴収票
- 公務員の場合は、退職手当の試算
相手方が資料を出さないことも少なくありません。その場合は、調停の中で開示を求めるほか、裁判所を通じた調査嘱託や、弁護士会照会で勤務先に問い合わせる方法があります。どの手続が使えるかは状況によって異なります。
企業年金・確定拠出年金、年金分割との違い
勤務先によっては、退職金の一部が企業年金や確定拠出年金として積み立てられています。これらも、婚姻期間に対応する部分は財産分与で考慮されることがあります。退職金規程だけでなく、制度全体を確認することが必要です。
一方、「年金分割」は、厚生年金の保険料納付の記録を分ける別の制度です。退職金の財産分与とは別に取り決め、手続をする必要があります。
財産分与を請求できる期間
財産分与は、離婚してから一定の期間が過ぎると、家庭裁判所に求めることができなくなります。民法の改正により、2026年4月1日以降に離婚した場合は離婚から5年、それより前に離婚した場合は離婚から2年です。
解決事例:まだ受け取っていない退職金を計算した事件
離婚 CASE FILE 01
夫がまだ退職しておらず、退職金を受け取っていない離婚事件です。勤務先への調査で、その時点で退職したと仮定した退職金額を確認しました。そのうえで、婚姻前と婚姻後の勤続期間を区別して、分与の対象になる部分を計算。自宅、預貯金、個人年金・生命保険と合わせて財産分与全体を整理し、解決しました。
過去の個別事例であり、同様の結果を保証するものではありません。
ご相談について
退職金が対象になるか、いくらになりそうかは、勤務先の制度や勤続年数、他の財産との兼ね合いで大きく変わります。手元にある資料をお持ちいただければ、何を確認すべきかから一緒に整理します。
ご相談は何度でも無料です(来所・1回60分)。土日・祝日も日程調整により対応します。