解説 離婚・財産分与
個人事業と離婚。
事業と生活が重なっているからこそ、分けて考える。
個人で事業をしている家庭では、事業のお金と生活のお金、仕事の場所と暮らしの場所が、はっきり分かれていないことがよくあります。夫婦で一緒に事業を支えてきたという家庭も少なくありません。
そのため離婚のときには、会社員の家庭にはない問題が出てきます。このページでは、個人事業主・自営業の家庭の離婚で問題になりやすい点を説明します。
事業の財産も、個人の財産
個人事業では、事業に使っている財産も、法律上は事業主個人の財産です。事業用の預金口座、売掛金、在庫、設備や車両なども、婚姻中に形成されたものであれば、財産分与の対象になり得ます。
この点が、会社を経営している場合との大きな違いです。会社の財産は会社のものなので、原則として財産分与の対象にはなりません(ただし、会社の株式は対象になり得ます)。同じ「事業の財産」でも、個人事業か法人かで、扱いの出発点が変わります。
家計と事業のお金が混ざっている
個人事業では、事業用の口座から生活費を出したり、生活用の口座から仕入れ代金を払ったりすることが珍しくありません。どのお金がどこにあり、何に使われてきたのかを、まず整理する必要があります。
確定申告書や青色申告の決算書、帳簿、事業用と生活用の通帳を並べて見ると、事業の資産として計上されているものと、実際に残っているものの違いが見えてくることがあります。
事業の借入れ
事業のための借入れがある場合、それを財産分与の中でどう扱うかも問題になります。借入れが何のために使われ、どの財産に変わったのか。事業用の財産だけを取り出すのではなく、借入れも並べて全体を見ることが大切です。
事業を手伝ってきた配偶者
個人事業では、配偶者が経理や接客、現場の仕事を担ってきたということがよくあります。専従者として給与を受け取っていた場合も、無給で手伝っていた場合もあります。
こうした関わりが、事業や財産の形成にどう影響したのかが、財産分与で問題になることがあります。「一緒に築いてきた」という実感と、数字として表れる財産の姿が一致しないこともあるため、どんな仕事をどれだけ担ってきたのかを、具体的に整理しておくことが大切です。
収入は、確定申告書だけでは分からないことがある
会社員の収入は源泉徴収票で分かりますが、個人事業の収入はそう単純ではありません。確定申告書の所得は、経費を差し引いた後の金額です。家計に関わる支出が経費に含まれていることもあり、申告上の所得と実際の生活の規模が合わないことがあります。
収入の見方は、婚姻費用や養育費の金額にも影響します。数年分の確定申告書や決算書を並べて、事業の実態を確かめることが出発点になります。
住まいと仕事場が同じ自宅
店舗兼住宅や自宅兼事務所のように、住まいと仕事場が同じ建物にある場合、離婚は「引っ越す」だけでは済みません。建物を出る側は、住居と仕事の拠点を同時に移さなければならず、取引先やお客さん、商品や設備にも影響が及びます。
建物の名義人と、そこで事業をしている人が違うこともあります。たとえば、夫名義の建物で、妻が自分の仕事をしているといった場合です。
こうした場合には、財産分与の金額だけでなく、次のようなことを一つの流れとして決めておく必要があります。
- いつまで建物を使えるのか(移転までの期間)
- その間の住宅ローンや固定資産税、光熱費などを誰が負担するのか
- 仕事に使っている設備や商品を、いつ、どう搬出するのか
- 残った家財や残置物をどう処理するのか
お金の条件だけを決めて、建物の使い方を決めないままにしておくと、離婚後に新たな争いの種になります。
確認する資料
- 数年分の確定申告書、青色申告決算書(収支内訳書)
- 帳簿、減価償却資産の明細
- 事業用・生活用それぞれの通帳
- 事業の借入れの契約書、返済予定表
- 店舗兼住宅の場合は、登記事項証明書、住宅ローンの資料、固定資産税の通知書
解決事例:住居と仕事場を同時に移す条件を決めた事件
離婚 CASE FILE 02
妻は夫名義の建物に住みながら、その一部を自分の仕事場として使っていました。夫は建物の売却を希望していましたが、妻にとって退去は、住居と仕事の拠点を同時に失うことを意味しました。財産分与だけでなく、移転までの期間、建物の使用、住宅ローンや固定資産税の負担、設備や家財の搬出までを合意に盛り込み、妻は財産分与金を受け取りながら、生活と仕事の基盤を失わずに新しい生活へ移りました。
過去の個別事例であり、同様の結果を保証するものではありません。
ご相談について
個人事業の家庭の離婚では、財産の整理と、離婚後の仕事や暮らしをどう続けるかが切り離せません。確定申告書や通帳をお持ちいただければ、何が財産で、何を決めておくべきかを一緒に整理します。
ご相談は何度でも無料です(来所・1回60分)。空きがあれば当日・翌日のご予約も可能です。土日・祝日も日程調整により対応します。