相続法大改正のブログ記事、第三弾です。できるだけネット上に公表されている公的な情報からウラを取っています。
施行日
2019年7月1日に施行済みです。
(平成30年法律第72号による改正後の民法附則第1条本文、平成30年11月21日政令316号)
http://www.moj.go.jp/content/001253488.pdf
(上記ページを「附則」で検索)
https://kanpou.npb.go.jp/old/20181121/20181121h07394/20181121h073940002f.html
改正前の取扱い
大原則
被相続人が有していた一般の金銭債権は、相続開始により当然に(遺産分割するまでもなく)各相続人に分割帰属します。
この点、預貯金債権が同様の取扱いを受けるかどうかについては、実務上の取扱いが定まっていませんでした(銀行は、相続人全員の同意がなければ引き出しや解約に応じないことも多くありました)。
平成28年最高裁決定
平成28年12月19日最高裁決定は、上記の問題について、預貯金の特殊な性質から、被相続人が有していた預貯金債権は当然には分割されず、預貯金債権行使のためには原則として遺産分割を要すると判示しました。
ただこれでは被相続人の死亡後、相続人の当面の生活費や葬儀費用等を工面できない場合がありえることから、今回の改正がなされました。
改正後の取扱い
今回の改正では、下記の条項が追加されました。
(新旧対照表)
http://www.moj.go.jp/content/001253528.pdf
「(遺産の分割前における預貯金債権の行使)
第九百九条の二 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。」
この改正の結果、預貯金の3分の1に相続分をかけた額(仮に600万円の貯金で、相続分が2分の1であれば600万円×3分の1×2分の1=100万円)までは単独で権利を行使できることになりました。
ただし法務省令による上限があり、現在のところ上限は150万円とされています(平成30年法務省令第29号)。
https://kanpou.npb.go.jp/old/20181121/20181121h07394/20181121h073940006f.html
基準時
平成30年法律第72号による改正後の民法附則第5条により、施行日以前に開始した相続であっても、施行日以降に債権を行使するときには適用されます。
「(附則)第五条 新民法第九百九条の二の規定は、施行日前に開始した相続に関し、施行日以後に預貯金債権が行使されるときにも、適用する。」
http://www.moj.go.jp/content/001253488.pdf
(上記ページを「附則」で検索)