遺産分割前に処分された遺産の取扱いの変更|相続法改正(5)

相続法大改正のブログ記事、第5弾です。

施行日

 2019年7月1日に施行済みです。
(平成30年法律第72号による改正後の民法附則第1条本文、平成30年11月21日政令316号)

http://www.moj.go.jp/content/001253488.pdf

(上記ページ内を「附則」で検索)

https://kanpou.npb.go.jp/old/20181121/20181121h07394/20181121h073940002f.html

改正前の取扱い

遺産分割の対象

家庭裁判所の実務では、遺産分割調停・審判の対象となるのは(1)相続開始時に存在し、かつ(2)遺産分割時に存在する財産とされていました(ただし、共同相続人の全員が同意すれば遺産として取り扱うことができるものとされていました)。

このため、相続の開始後、共同相続人のひとりが遺産を勝手に処分した場合、明らかな証拠があったとしても、そのひとりが処分された財産を遺産として取り扱うことを認めなければ残りの財産は調停・審判では「公平に」分割するしかなく、処分行為については不法行為や不当利得として通常裁判で別途決着をつけなければなりませんでした。

改正後の取扱い

今回の改正では、民法906条の2として下記の条項が追加されました。

(新旧対照表)

http://www.moj.go.jp/content/001253528.pdf

「(遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲)
第九百六条の二 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。」

ここまでは、これまでの実務を明文化したものといえます。

本改正ではさらに、民法906条の2第2項として次の条項が追加されました。

「2 前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。」

上記第2項はこれまでの取扱を変更するものであり、今後は、勝手に処分をした相続人「以外」の相続人全員が同意をすれば遺産として取り扱うことができるようになり、残余の遺産についての調停・審判で処分された財産を遺産として計算にいれることができるようになります(ただし、勝手に処分をしたとされる相続人が事実を争う場合には、裁判所が認定できるだけの証拠が必要です)。

基準時

平成30年法律第72号による改正後の民法附則第2条により、施行日後に開始した相続について適用されます。

http://www.moj.go.jp/content/001253488.pdf

(上記ページ内を「附則」で検索)