不動産承継の対抗要件の変更|相続法改正(4)

相続法大改正のブログ記事、第4弾です。

施行日

2019年7月1日に施行済みです。
(平成30年法律第72号による改正後の民法附則第1条本文、平成30年11月21日政令316号)

http://www.moj.go.jp/content/001253488.pdf
(上記ページ内を「附則」で検索)

https://kanpou.npb.go.jp/old/20181121/20181121h07394/20181121h073940002f.html

改正前の取扱い

前提

まず、共同相続人のひとりは法定相続分どおりの内容であれば、単独で相続人全員分の不動産の相続登記ができます(相続人が配偶者と子供2人の場合、「配偶者2分の1、子A4分の1,子B4分の1」という内容であれば子ひとりで登記ができる)。

このことは、遺産分割の合意がないまま不動産が長期間放置される可能性があることを考えればやむをえないでしょう。ただその一方で、有効な遺言がある場合(相続人のひとりに当該不動産をすべて与える旨の遺言がある場合など)には、真の権利関係に反する登記が作出される可能性があることを意味します。

第三者との関係

先ほどのケースで、「配偶者に不動産の全部を与える」という遺言があった場合でも、子Aは被相続人の不動産について、単独で「配偶者2分の1、子A4分の1,子B4分の1」という内容で相続登記ができます。この場合、第三者がその登記を信頼して子Aの共有持分を買ったとしたら、第三者と配偶者の関係はどうなるでしょうか。

判例理論

この点について判例は、遺言が「遺贈」であれば配偶者は登記なくして第三者に対抗できないとしていながら(最判昭和39.3.6)、遺言が「相続分の指定」「遺産分割方法の指定」であれば登記がなくとも第三者に対抗できるとしていました(最判平成5.7.19、平成14.6.10)。
しかしこれでは遺言が「相続分の指定」「遺産分割方法の指定」であった場合、第三者はいつ権利を失うかわからずあまりに不安定な立場に置かれることから、今回の改正がなされました。

改正後の取扱い

今回の改正では、下記の条項が追加されました。


(新旧対照表)

http://www.moj.go.jp/content/001253528.pdf

「(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第八百九十九条の二 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

この改正の結果、先ほどの例における第三者は、登記さえ備えておけば原則として保護されることになりました。

逆に言えば、配偶者は相続後に急いで登記をしなければ、第三者に権利の一部を取得されてしまう可能性があるということになります。第三者が極めて悪質である場合は「背信的悪意者の理論」などで戦うことはできますが、そのようなトラブルを避けるため、今後は法定相続分をこえる持分を遺言で取得する場合、これまでにまして相続登記を急ぐ必要があるでしょう。

基準時

平成30年法律第72号による改正後の民法附則第2条により、施行日後に開始した相続について適用されます。

http://www.moj.go.jp/content/001253488.pdf
(上記ページ内を「附則」で検索)