弁護士が教える、相続が発生したらしなければならない12のこと

 ご両親や配偶者が亡くなった際、すべきことは全部でどれだけあるでしょうか?

 相続関係の手続にはシビアな期間制限が多く、また裁判所や税務署、市区町村役場など、全く異なる系統の役所での手続が必要になるうえ、これらが相互に関連しています。

 ですので相続人の側で、全体の流れをあらかじめ頭に入れて効率よく動いていく必要があります。

考えたくはないことだと思いますが、相続が発生した際にしておくべきことを、弁護士の立場からまとめてみました。

 

葬儀

 まずは葬儀です。常識的には葬儀の費用は遺産から支出するものですが、争いになった場合、裁判所は「葬儀の主催者が費用を負担する」との判断をすることがあります。

 相続人が複数いる場合、全員で葬儀費用の負担について事前に明確な合意をしておくのが適切です。ただ現実問題として、この段階で細かい話をすることは難しい場合もあると思います。

 せめて、葬儀にかかった費用や受け取った香典の額、返礼品の費用などについて、できるだけ領収書やメモなどの記録を残しておきましょう。

死亡届の提出

 7日以内に、死亡届を提出します。火葬許可申請等も同時に行うことになるので、お早めに。

死亡届の提出義務者

 いちおう、法律で下記の順序が定められていますが、順序にかかわらず提出できます。

 第1.同居の親族

 第2.その他の同居者

 第3.家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人

 ほかにも、同居していない親族、後見人等も提出できます。

死亡届の添付資料

 死亡診断書を添付します。死亡届と一体になっていることもあります。

死亡届の提出先

 死亡者の死亡地・本籍地又は届出人の所在地の市区町村役場です。

社会保険関係の手続

 健康保険、年金、介護保険等について、市区町村役場や年金事務所等で手続を取ります。14日以内などという期間制限がある手続もありますので、やはりお早めに。

法定相続人の調査(戸籍等の取得)

 相続手続では、何かと戸籍が必要になります。

 死亡届を提出してからしばらくたつと、亡くなった方の本籍地の市区町村役場で死亡の記載のある戸籍(除籍謄本)を取れるようになります。そこから記録を追いかけて、相続人を確定するのに必要な戸籍(現在戸籍・戸籍の除票・除籍謄本・改製原戸籍など)を取得していきます。

 郵送等による取り寄せも可能ですが、複数の役所から取り寄せをしなければならないことが多く、かなりの労力がかかります。

遺言書を探す

 遺言書がないか探します。主として、公正証書遺言と自筆証書遺言が問題になります。

 なお、いわゆる遺書のようなものがあっても、法定の方式を満たしていないものは「遺言」としての法的効力は全くありません。

公正証書遺言の探し方

 亡くなった方の生前は、推定相続人だからといって公正証書遺言の検索はできません。

 しかし、相続が発生した後は、相続人は、亡くなった方が公正証書遺言をしていたかどうか、公証役場で調べることができます。

 平成元年以降に作成された遺言書であればデータベース化されていますので、最寄りの公証役場に行けば検索をすることができます。

自筆証書遺言の探し方

 これについては決まった方法はなく、家の金庫やタンス、仏壇の中など、「ありそうなところ」を探すほかありません。貸金庫などに保管されていることもあります。

 なお、遺言書に封がされている場合は、開封しないようにしてください。

検認の手続

 自筆証書遺言等が見つかった場合、家庭裁判所での「検認」という手続が必要になります。

 遺言書の内容を確認し、その後の偽造や変造を防ぐための手続です(有効性を判断するものではありません)。

 具体的に何日以内とは決まっていませんが、「遅滞なく」家庭裁判所に検認の請求をしなければならないと定められています。

 請求から検認終了までにはかなりの時間がかかりますので、この意味でも急いで行う必要があります。

 請求があると、家庭裁判所は、相続人全員に検認の期日の通知をする運用になっています(他の相続人が出席するかどうかは自由)。

 複数の相続人がいる場合、この場面で揉め始めることも多いです。

 なお、公正証書遺言の場合、この検認は必要ありません。公正証書遺言の大きなアドバンテージのひとつです。

遺産の調査

 プラス資産、マイナス資産を調査し、遺産の全容を明らかにする必要があります。

土地、建物(不動産)の調査

 亡くなった方に送られていた固定資産税の納税通知書の明細書や、市区町村役場で取得できる名寄帳、保管されていた権利証などから、遺産となる不動産(土地、家屋、マンションなど)を確認します。

 マンションの場合、管理費や修繕積立金をどうするかも問題になります。

 家の倉庫や離れなど、建物としての登記はされていないけれども固定資産の課税がされている建築物もありますので、これらも漏らさないようにします。

 次に、最寄りの法務局で不動産の登記事項証明書を取得します。抵当権の有無や共有持分など、重要な情報が記載されています。ほとんどの不動産の登記情報はデータ化されており、どの法務局でも取得できます。

 登記事項証明書の取得に関しては、オンラインでの手続もあります。

 なお、登記事項の「地番」と、郵便などのための「住居表示」は番号が異なりますので、注意が必要です。

動産の調査

 宝石、書画、骨董品など、財産的価値のあるものについては確認が必要です。特に大きな財産的な価値がないものについては、形見分けのようなかたちで分配することも多いでしょう。

 被相続人が使用していた自動車や船舶、車両類も、車検証や検査証、契約書、郵便物などから所有者やローンの有無を確認しておきましょう。

預金の調査

 預金通帳や銀行からの郵便物などから、預貯金を調査します。

株式、保険、有価証券等の調査

 株券、配当通知、保険証書、証券会社からの郵便物などから調査します。

債権の調査

 契約書などから調査します。

債務の調査

 契約書や郵便物などから調査します。 

相続放棄・単純承認・限定承認の選択

 明らかに資産よりも債務(借金)の方が多い場合は、原則として被相続人の死亡の時から3ヶ月以内に相続放棄をします。状況に応じて、期間延長の申出などを検討します。限定承認をする場合も、死亡の時から3ヶ月以内にするようにします。

遺産の使い込みのようなことをしてしまうと、相続放棄等ができなくなりますので注意が必要です(法定単純承認)。

相続放棄、限定承認、単純承認についての詳しい記事はこちら(枠内をクリック)

相続放棄、限定承認、単純承認という3つの選択。

2017.05.17

準確定申告

 亡くなった方が確定申告をしていた場合などは、相続人は、死亡を知った時から4ヶ月以内に、亡くなった方のその年の確定申告(準確定申告)をする必要があります。

相続税の申告

 相続税の納付義務がある場合、相続人は死亡を知った時から10か月以内に相続税を納付する必要があります。それまでに遺産分割協議がまとまっていなかった場合、いったん仮に申告して相続税の支払いをし、あとで修正申告や更正請求等をするということになります。

 税額軽減の特例を受けたい場合などは、更正請求等は、本来の納付期限から3年以内にする必要があります。ただし、相続に関する訴訟や調停が継続中であるなどやむをえない事情があれば、税務署長の承認を得て期限を伸ばすこともありえます。

遺産の分割内容の確定

 調査した遺産の内容などをもとに、遺産の分割内容を決定します。

遺産分割協議(遺言がない場合)

 複数の相続人がいる場合、どのように遺産を分割するかを協議します。全員の合意が得られた場合、遺産分割協議書を作成して全員で署名押印し、合意内容を明確化しておきます。全員が集まることが難しい場合、郵送等で順次署名押印していく方法もあります。

遺言がある場合

 遺言の内容によって異なりますが、遺言執行者がいる場合、遺言執行者が遺言の内容を実現していきます。ただし、ある相続人に「相続させる」旨の遺言の場合、不動産に関しては当該相続人が登記をするものとされています。

 相続人・受遺者・遺言執行者全員の同意があれば、遺言と異なる内容の遺産分割も可能です。

遺留分減殺請求権の行使

 遺贈や巨額の生前贈与などで、ほとんど遺産をもらえなかった相続人がいたような場合、遺留分減殺請求権の行使がありえます。死亡の事実及び遺贈等があったことを知った時から1年以内という期間制限があります(亡くなった時から1年以内にしておくのが安全です)。

遺留分減殺請求権の行使があった場合、別途解決の必要があります。

調停・審判(裁判)へ

 協議がまとまらなかった場合、家庭裁判所での調停などで解決することになります。調停は、場所は裁判所で行われますが、調停委員や裁判官などの第三者が間に入っての話し合いです。調停でも話がつかなかった場合には、さらに審判に移行します。

 遺留分減殺請求の場合は、家庭裁判所での調停で話がつかなかった場合、民事事件を取り扱う地方裁判所等での訴訟になります。

遺産分割の内容が確定した後の手続

 相続人間で遺産分割の合意がなされた場合など、遺産分割の内容が確定した場合は、順次遺産の名義変更等をしていきます。

相続登記(不動産の名義変更)

 法務局で名義の変更(相続登記)を行います。遺産分割による相続登記のほか、遺言による名義変更、法定相続分どおりの相続登記などもあります。

預金の解約等

 銀行等で預金の解約(払い戻し)、株式・有価証券等の名義変更(売却)手続等を行います。やはり遺言によってなされる場合もあります。

更正の請求等

 仮の相続税の申告をしていた場合、分割のあったことを知った日の翌日から4ヶ月以内に更正の請求等を行います。修正申告が必要となる場合もあります。遺留分の取得者も、必要に応じて相続税の期限後申告等を行います。

相続手続きの完了

 いかがでしたでしょうか?相当にやることが多いという印象ではないでしょうか?

 上記は、あくまで一般的なケースについて、一連の流れを思いつくままに書いていったものですので、場合によっては不要な手続もあります。とはいえ、大まかなイメージはつかめたのではないでしょうか。

今後もこの記事は更新していきたいと思います。

相続人の範囲や相続分については、下記の記事をご覧ください(枠内をクリック)

相続順位と法定相続分の決まりかた。

2017.05.12

 

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